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2021.01.26

一人ひとりに対して丁寧なコミュニケーションを。ユーキャンの着実なMAツール活用術

通信教育講座の大手・ユーキャンでは、2016年よりMAツールを導入し、多様化する顧客ニーズを捉えたメールマーケティングを実践されています。現在、安定的に年間+6%のCVR向上を実現。その成功までの道のりを、ユーキャンの松倉拓海さま、伊藤知紘さま、またプロジェクトのパートナーとなった電通アイソバーの谷米竜馬に聞きました。

多様な講座と顧客ニーズに寄り添うためのMA導入

――まず、松倉さまと伊藤さまの担当領域を教えてください。

ユーキャン 松倉さま(以下、松倉):当社には大きく通信講座部門と通信販売部門があり、私たちは通信講座部門のウェブマーケティングを担当しています。主にWebサイトにおける「資料請求」と「申し込み」の2つのコンバージョンの獲得がミッションになります。

――MAツールの導入を検討する前は、貴社ではどのように顧客を獲得してきたのでしょうか?

松倉:当社はリアル店舗を持たず、ダイレクトマーケティングという営業手法を用いて事業を展開してきました。Webサイトをはじめ、コンビニやスーパーに設置したカタログ、また新聞折り込みチラシなどですね。年間で一番リーチを取れるのは年始のテレビCMですが、若年層へのアプローチが課題になってきていました。そこで近年デジタル上での施策にかなり力を入れており、今回のMA導入もその延長にあります。

――通信教育講座は、昨今さまざまな種類が登場していると思います。MAツール導入前の課題をうかがえますか?

松倉:当社には、150講座ほどのラインアップがあります。ファイナンシャルプランナーや行政書士のような王道の法律系資格から、医療事務や調剤薬局事務のような手に職系の資格、あるいはボールペン字やパソコンなどの実用系、楽器や塗り絵といった趣味系など、本当に多岐にわたります。すると受講の検討動機も属性情報も、講座によってまったく違います。

それに対して、以前のメールマーケティングは、いわゆる一斉配信しかできていませんでした。究極的には1講座ごとにアプローチする戦略を変えるべきですし、同じファイナンシャルプランナー講座でも20代女性と40代男性では受講動機がまったく違うので、一人ひとりに合わせたコミュニケーションを図りたいと考えました。そのために2016年、日本にも広がりつつあったMAツールを導入しました。

――MAツールに、どのような期待がありましたか?

ユーキャン 伊藤さま(以下、伊藤):当時から取得していた自社サイトのログや、基幹データとして保有していた顧客情報を組み合わせて、メールでのOne to Oneマーケティングを実現したいと考えていました。特に、資料請求を起点とする日数や、サイト上の特徴的な行動を捉えて、細かくセグメントを切って配信していく青写真を描いていました。

伊藤:当初は別のパートナー企業と組んでいたのですが、今振り返ると、自分たちの期待値を上げすぎていたように思います。「オートメーション」というからには、一度セットすれば、私たちは何もせず成果が上がるようなイメージを持ってしまって(笑)。ふたを開けてみると、そもそもセットするデータの整備にこそ非常に工数を要することが分かりましたし、施策を回すにもかなり専門的なデータの知識が必要で、学習コストがかかりました。

また、最初に入れたツールは、実はSalesforceではなかったのですが、それがなかなか使いこなせていませんでした。そこで、別途ご縁があった電通アイソバーの谷米さんに加わっていただくことになり、2016年の冬ごろからプロジェクトを仕切り直しました。

はじめからセグメントを細かくせず、一定の母数の確保が大事

――電通アイソバーとして、多種多様なクライアント企業のMAツール導入や運用を支援する中で、施策実施前の準備に時間がかかることはよくあるのですか?

谷米:そうですね。原因のひとつは、そもそも何のためにMAツールを導入するのか、目的が明確でないことです。また、データのつなぎこみは、ユーキャン様のように多種多様な顧客データをすでに持たれている企業ほど、時間と手間がかかってしまいますね。

今回ユーキャン様では、導入の目的や実現したいイメージははっきりしていたので、その点はまったく問題ありませんでした。ただ、データの整理や活用に課題をお持ちだったので、その部分を我々がツール選びからご支援させていただきました。

――では、電通アイソバーがパートナーとなってからの具体的な施策について、教えてください。

伊藤:主に5つのシナリオで、PDCAを回しました。中心となったのが、資料請求者に対して資料発送と到着確認のタイミングで送る「資料請求フォローメール」と、資料請求いただいた講座の特長やユーザーメリットを紹介する「講座別フォローメール」です。
いずれも、資料請求をした段階のホットなユーザーにアプローチし、申し込みへつなげる意図があります。

特に「講座別フォローメール」については、当社のWebサイト上で講座の詳細や費用など、細分化したページがあるので、そのページ来訪のユーザーログをもとに、どんなコンテンツが最適なのかを細かくセグメントし、配信の出し分けを実施しました。

とはいえ、施策を開始しても、すぐに成果は上がりませんでした。そこで谷米さんから「もっと幅広いところを狙って配信をかける方向にシフトしましょう」とアドバイスいただき、細かすぎたセグメントを見直しました。

――なるほど。もともとOne to Oneに近いアプローチのイメージを持たれていたから、導入初期からかなり細かく試されていたんですね。

伊藤:はい。ですが、最初からセグメントを細かくしてしまうと母数が確保できず、統計的に有意とみなしていい差が出ているのかの検証が難しいという課題がありました。そこで、セグメントが必要な箇所とそうでない箇所を洗い出し、母数を取りつつも、ユーザーごとに最適化できる範囲を模索しました。

谷米:まずは一定の配信数を確保する前提で、資料請求者全員を対象とする施策を重点的に回していきました。同じシナリオの中で、資料請求後のタイミングを図ったり、性別によって差し込む画像を変えたり、個人の行動時間に応じた時間に配信したりと、数百パターンの送り分けができるようにしました。そこから、ひとつの施策の効果を検証し、影響している要素を抽出して、その要素を軸に施策を改善していく流れができました。

データ連携と精緻な効果検証がポイント

――先ほどデータ整備の話も挙がりましたが、データはどのように活用されているのですか?

谷米:保有するデータをすべてMA内に収めようとする企業もありますが、やはり「どのデータをどう使うか」をある程度考えた上で、必要な種類を入れていくことが得策だと思います。今回はOne to Oneマーケティングを念頭に、一人のユーザーにひもづくアクセスログ、資料請求や受講情報のデータなどをSalesforce内でつなぎ込みました。MAツールにCDP(Customer Date Platform)のような「データを蓄積する場所」の役割も持たせて、One to Oneコミュニケーションを実践するツールとして使っている感じですね。2020年からはLINEの配信ツールとのデータ連携も行い、チャネルを拡張したので、LINE IDも統合しています。

――さまざまなデータを連携させたとのことですが、検証はスムーズに進んだのでしょうか?

伊藤:効果検証は、たしかに難しかったですね。各種のデータが、ユーザーの属性や行動などさまざまな要素を横断しているので、数字の動きをどう見ていくべきかの定義や、Salesforceの特性上、配信を1つのシナリオ上で組んでいるため、その中のどのクリエイティブが有効だったかの見極めが課題でした。
現在は、メール配信者と非配信者での申込みのCVRを比較し、この差分を大きな指標として捉えています。また、各クリエイティブについては、その配信3日以内の反応がそのクリエイティブによる影響と捉え、数字を追っています。

検証のための環境は、施策データと基幹システムの購買データをSalesforce内で統合処理し、Googleのデータポータルに連携する仕組みを本プロジェクトの一環として構築いただきました。これにより毎日最新の施策効果を自動で可視化することができるようになりました。

――状況を一覧できると、次の施策も立てやすいですね。成果を高めていくために、電通アイソバーでは何が大事だと考えていますか?

谷米:One to Oneのコミュニケーションは最終目標ではあるものの、はじめから細かい条件設定をしないことが、実は重要です。MAツールには多様な機能があるので、それを可能な限り使って絞り込んだセグメントにアプローチしたいと思いがちですが、どうしても配信の母数が小さくなります。すると検証ができなかったり、手間に見合わなかったりもします。ある程度の「勝ちパターン施策」を実装し、その利益だけで導入や運用のコストをまかなえるように整えてから、さらなる施策を追加していくのが成功のカギだと思います。また、常に最新の効果を検証できる環境を作れたこともPDCAを回す上で非常に意義のあることですね。

率直な議論ができるフラットな関係性がありがたい

――現在、どのような成果が上がっていますか?

伊藤:全シナリオを通して、メール配信者と非配信者とを比較すると、直近1年間のCVRは6.4%のリフトアップを達成しました。そもそもメール配信数が多いため、1%のリフトでも十分なインパクトがあり、手応えを感じています。仕切り直してから1年ほどかかってしまいましたが、2018年ごろからは安定的な成果が確認できています。

松倉:客観的な数字で成果が上がっていることで、社内の評価も高まっています。さまざまなデータを蓄積し、一人ひとりのお客様にチャネルを連携した最適なアプローチができるという、MAツールの理解も進んできました。プロジェクト自体、社内のイノベーションアワードという賞をいただくこともできました。

――現在の工夫について、教えてください。

伊藤:一定の成果が継続的に得られるようになったので、今は講座ごとの反応の特徴を踏まえてユーザーボイスを盛り込んだり、訴求ポイントを変えたりと細かなチューニングをしながらCPAの向上を図っています。はじめはセグメントが細かすぎてうまくいかなかった施策も、タイミングやクリエイティブのチューニングで効果が得られるようになってきました。

――パートナーとしての電通アイソバーについて、感想や今後の期待などうかがえますか?

伊藤:仕切り直し時のセグメント再設定のご提案は、他社でのMAの豊富な知見や導入経験があるからこそのお話だったと思います。事業会社は自分たちのサービスには詳しいものの、ツールの活用などデジタルマーケティングの知見はなかなか貯められないので、今後もぜひ幅広い経験に基づく支援をいただけるとうれしいです。

松倉:同感ですね。加えて、私が印象に残っているのは、谷米さんやチームのみなさんの誠実な姿勢です。こちらの意見に表面的に賛同するのではなく、本当にいいと思ったらいい、はまらなさそうだと思ったら率直に議論できる、フラットな関係がとてもありがたいです。そんな関係性を今後も築いていければと思っています。

――2020年にLINEのチャネルを増やしたとのことですが、今後の展望や期待などについてお聞かせください。

松倉:メールとLINEのチャネル横断的な配信量のコントロールや、チャネルに合わせたクリエイティブの工夫などが直近の課題ですね。ここ2年ほどで、MA施策に対する社内の理解が明らかに高まっており、他部署からもSalesforce活用の相談を受けています。もうひとつ高い視点に立って、全社的な顧客コミュニケーションの統合にも、Salesforceをプラットフォームとして使っていきたいと考えています。

谷米:しっかり成果が上がっているだけでなく、社内でも評価や関心が高まっていることは素直にうれしいです。MA施策に限らずPDCAサイクルが伴うマーケティング活動は、まずやってみることが大事です。もちろん実施前には分析や仮説立てのフェーズがありますが、考えているだけでは先に進みません。小さく始めて、検証しながら、より成果が得られる方法を探っていく。進みにくい場合は、我々から参考になる他社事例を提示したり、意思決定に必要な材料やディスカッションをさせていただいたりもします。

今後はデータのインとアウト、顧客との接点となるチャネルをより充実させることでSalesforceをただのMAツールとして使うのではなく、データを活用したより良い顧客体験を提供するための頭脳として発展させていくことが出来ればと考えています。例えばSalesforce内でアンケートを作成し、その回答内容に応じたメールやLINEの出し分けなども可能なので、そうしたよりインタラクティブ性のある施策にも広げていければと思います。

松倉 拓海 まつくら たくみ
ユーキャン 教育事業部 ウェブマーケティング部 サイト企画課 係長
広告会社を経て、2010年にユーキャン入社。自社通信教育サイトの運用業務において、全体統括と予算管理を担当。マーケティングオートメーション(MA)を軸に、部門の垣根を超えたクロスメディア施策も推進。

伊藤 知紘 いとう ちひろ
ユーキャン 教育事業部 ウェブマーケティング部 メディア企画課
2015年ユーキャン入社。サイト制作ディレクション、マーケティングオートメーション(MA)運用、オウンドメディア運用に従事。UI/UXを起点としたマーケティング・コミュニケーション領域に関して様々なプロジェクトを推進。

○ライター : 高島 知子
○カメラマン : 八田 政玄

谷米 竜馬 Ryoma Tanigome

データデザイン部 データマーケティングコンサルタント
データドリブンなOne to Oneコミュニケーションの実現を支援するコンサルティング業務に従事。
国内大手メーカー、製薬、EC、教育、不動産などB to BとB to Cの両領域に対し、マーケティングオートメーション(MA)ツールの導入・運用支援から顧客コミュニケーションの立案、施策結果の検証を含む一連のPDCA業務をしてサポート。

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