前述のように、ソーシャルメディアとの接点がより濃くなる一方でリアルでの接点が薄くなる生活者と繋がるために、企業はこれまで築いてきたマーケティングの施策を見直す必要があります。
しかし、冒頭にも示した通り、ファッションやコスメブランドを例に挙げると、従来リアルだからこそできた豊かな世界観の表現や丁寧でホスピタリティ溢れる接客体験、イベントで感じる没入感といったオフラインならではの顧客体験が主導的で、オフラインは補助的な位置付けだったため、オフラインで購買からロイヤル化までを完結するように考え直すことは「手探りの取り組みになりそうだ」とハードルの高さを感じる向きもあるかもしれません。
または、eコマースの強化やリモートでの接客を模索するなど、「できることからやってみる」というチャレンジを始めていたとしても、どこかで「これは本当に成果に繋がるのだろうか?」と疑問を感じている場合もあるでしょう。
これに対し、電通アイソバー エクスペリエンスデザイン本部 本部長 潮田 健一郎は、「新型コロナによる環境の変化に対し、課題に対応しようと模索する企業は増えている。しかし、その内容は断片的であるように感じられる。私たちは課題の全体像を見て、アプローチしていく必要があると考えている」とし、次のように続けました。
「これまで、ファッション・コスメ業界に限らず多くの企業にとって、オンラインの施策は来店促進などオフラインの施策をサポートする役割でしかなかった。しかし、今後はオンラインの中で完結するようカスタマージャーを描き直さないといけない。
その際には、断片的にソーシャルメディアを活用する、といった発想ではなく、オンラインだからできること、例えばソーシャルメディア上で購買できるようにし、その後にブランドを認知するといったフェーズの逆流も踏まえて最終的に顧客のロイヤル化を実現する方法を考えることが重要だ」。
続けて潮田は、「オフラインで行なっていた施策と同じスケールでマーケティングを展開することが重要だと考えている。単にオフラインの施策をオンラインに置き換えというわけではなく、オンラインにふさわしい流れを考えるべきだろう」と、指摘しました。
上述の通り、オンラインを活用することによって、これまでできなかったことや考えつかなかったような新しいCXが実現できる可能性は拡がります。そう考えると、新型コロナによる影響を過大にネガティブに捉えすぎるのではなく、改めて顧客とどう向き合うべきなのか? 考える機会とすることが状況を打開する第一歩になるのではないでしょうか。
また、実際にその可能性を見出そうとする事例が出始めています。
そこで、「オフラインで認知〜顧客のロイヤル化までを完結するには?有名ブランドの施策から見るCXのニューノーマル」では、誰もが知るファッション・コスメブランドの施策を例に挙げ、その意図やポイントなどを見ていきます。