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2020.11.12

インドの若者を動かすテクノロジートレンド

人口14億人のインドは、インターネットを利用している人が7億人を超える世界第2位のネット大国です。人口構成で大きな比率を占める18~29歳のネット利用者は全体の35%を占めています。デジタルに精通するこの世代は、テクノロジーやモバイルアプリケーションなど多くのビジネスの成長エンジンになっています。つまり、インドは世界最大のモバイルアプリ市場であり、1人あたり平均約50ものアプリがスマートフォンにダウンロードされています。

インドでは、スマートフォンはもちろん、インターネットの料金がお手頃であり、デジタルサービスの利用者は毎秒3人増え続けています。配車の予約から家の購入まで、インターネットとアプリが市民のあらゆるニーズに対応しています。
インドの若者層は毎日少なくとも3時間は携帯電話を操作しています。使用目的は、ソーシャルメディア、eコマース、エンターテインメント、検索の4つに分けることができます。具体的には、配車の予約、ホテルのチェックイン・チェックアウト、食事の注文、衣服の購入、アパートの賃借、ニュースのチェック、エクササイズやフィットネス……。やりたいこと・ほしいものは何でもアプリさえあれば手に入るのです。今の若者世代は常に活動的で、それに遅れまいと企業は豊富なコンテンツとインタラクティブなユーザーインターフェースを備えた若者向けアプリを次々と開発しています。この記事では、インドのハイテク世代が注目する最新のテクノロジーを紹介するとともに、移り気の早いこの世代のニーズを満たそうと新しいアイデアやアプリを作り出している大手企業やスタートアップの取り組みを紹介します。

若い世代を魅了する人気アプリとテクノロジー

スマートフォンの普及により、「何でも、どこでも、いつでも」を意識したマーケティングが求められるようになり、こうしたニーズを満たすアプリに、若年層はこれまでにないほど依存しています。インドにおけるアプリの平均使用時間は、2017年以降、90%増加しており、ショッピングアプリ、ゲームアプリ、ソーシャルメディアアプリがとくに急速に伸びています。AmazonやUberなどの大手企業から、Flipkart、Paytm、OYO、Zomatoなどのスタートアップに至るまで、幅広い消費者層を取り込み、優れた顧客体験(CX)を提供しています。インドにはユニコーン企業が21社あり、その数は米国、中国、英国に続いて世界第4位です。この21社のうち少なくとも8社のアプリが、18~25歳の若者のスマートフォンにダウンロードされています。

こうした企業がどのようにしてインドの若者の生活に影響を与え、優れたCXを提供しているかを紐解いていきます。

FLIPKARTとAMAZONの90分/即日配達

課題山積で目まぐるしく変化する現代社会において、特に若い世代は時間の余裕がありません。例えば、AmazonFlipkartはインドのオンラインショッピング市場の計60%を占めており、若年層はその最大の消費者層です。eコマースの即日配達が普及するなか、Flipkartは「90分配達」という驚くべきサービスを考案しました。

米Walmart傘下のeコマース大手Flipkartは、地元の店舗や同社の倉庫からわずか90分で商品を配達するサービス、「Flipkart Quick」を開始しました。都市部すべてのローカルストア(kiranas)と提携し、食料品、乳製品、肉製品から携帯電話、電子機器アクセサリー、文房具や家庭用品など、2000点を超える商品を配達しています。あらゆる生活必需品をどこよりも早く届ける配達モデルを確立したFlipkartは、多くの新規顧客を獲得してきました。

インドのキャッシュレス化を促進したPaytm、Facebook-Whatsapp、Google Pay

eコマースとデジタル市場業界の成長に伴い、「安心・安全な」お支払い方法が不可欠になりました。インドのハイテク世代は、現金を持たずに、支払いはすべてスマートフォンで済ませます。スマートフォンやインターネットの普及に並行して、デジタル決済も拡大しています。「デジタル・インディア」を推進するインド政府は、若年層をフックにキャッシュレス経済の実現に取り組んでいます。

2019年、インドのデジタル取引は、383%という驚くべき成長を遂げました。具体的には、オンライン決済において、クレジットカードとデビットカードが43.5%の推定シェアでトップとなり、続いてUPI (Unified Payment Interface、統一支払いインターフェース)が40.4%、ネットバンキングが10.9%となりました。UPIはモバイルアプリを銀行の口座に直接接続して決済を行うやり方であり、222%の成長を記録しました。UPIで最も人気があるアプリは、7500万人のユーザーを有するGoogle Payです。Google Pay に続いて、PaytmとPhone-peも人気です。インドでは、若いハイテク世代がUPI決済システムを利用していて、2023年までには世界のデジタル決済市場の2.2%を占めると推測されています。

インドで最も有名なソーシャルメディアアプリで、5億人の顧客を持つFacebook傘下のWhatsappも、UPIベースのWhatsapp Payのサービスを近く開始する予定で、2億人超の利用を見込んでいます。

Paytmのウェブサイト

フィットネスと健康をアプリがサポート

健康こそ幸せの源です。ところが、目まぐるしく変化する現代社会において、忙しい若年層が日々健康的な生活を送るのは難しいです。この問題をシンプルに・楽しく解決するために、Cure.Fitは目的別に4つのサービスを開発しました。具体的には、フィットネスのためのCult.fit、健康的な食事のサブスクリプションサービスEat.fit、メンタルヘルスのためのMind.fit、そして診断を行うCare.fitです。これらのサービスは、モバイルアプリ(オンライン)ではもちろん、サービスセンター(オフライン)でも、顧客の要望に答えられるような展開しています。現在、800を超すセンターを持つCure.fitには、50万人超の登録者を有し、その大半が18~29歳の若者です。Cure.fitはテクノロジーとAI(人工知能)を活用してユーザーの健康増進をサポートします。Eat.fitは健康的な食事を提供します。Care.fitはデジタル病院とも呼べるシステムで、 オンラインでの医師への相談、処方から診断書の作成まで、すべてがデジタル化されています。Cure.fitは、これらすべてのサービスを連結させたCXを提供しており、今後10年間で登録者数が1億人に達すると見込んでいます。

インドで急成長するスタートアップ:EdTech

インドで最も成功するスタートアップは、eコマースサービスを提供する企業ではなく、オンライン教育を提供する企業かもしれません。世界最大のミレニアル人口を有するインドの教育市場は1000億ドル(約10兆6000億円)規模で、世界で最も急速に成長しています。BYJU’sUnacademyは、「すべての人に教育を!」を目的に、携帯電話を「教室」に変えています。2020年、BYJU’sは、世界最大と称されるEdTechスタートアップになりました。BYJU’sの評価額は105億ドル(約1兆1130億円)であり、登録ユーザーは280万人です。

これらのエドテックプラットフォームは、優れた品質のコンテンツを備えています。2010年代がeコマースの時代だったとしたら、2020年代のインドはエドテック企業の時代となるでしょう。

BYJU’sのウェブサイト

アプリでストレスフリーな生活を

食料品の買い物からアパートの購入、家政婦採用、電気屋や配管工などへの修理依頼が、たったワンクリックでできると想像してみてください。驚くべきことです。OYO、BigBasketDunzoUrbanClapFurlencoは、モバイルアプリをワンクリックするだけでこうしたニーズを実現できるよう、日々取り組んでいます。

例えば、BigBasketは生鮮食品や食料雑貨をわずか2~3時間で玄関先までお届け。綿密なサプライチェーンモデルにより、インドで400万人を超えるユーザーを獲得しました。このオンライン配達チェーンは、テクノロジーを利用したデーター分析を行い、商品ごとの消費動向を特定し、食品の廃棄の削減にも成功しました。

仕事や学校で忙しい若い世代には、日々のタスクをこなすためには、お手伝いが必要です。Dunzoは月に200万件超の利用があるアプリ(サービス)であり、近くの店に薬を買いに行ったり、レストランで料理を注文したり、荷物を発送したりする代行スタッフを45分以内に派遣してくれます。また、UrbanClapは配管工から結婚式のフォトグラファー、ヨガ教師、インテリアデザイナー、修理技術者まで、あらゆる分野のプロのサービスを提供しています。実は、インドとアラブ首長国連邦は世界的にも家事代行サービスへの需要が高く、2019年には750万件の依頼を受けています。

20代の若者は、転職、住み替え、引っ越しと、常に変化の多い生活をしています。そんなミレニアル世代にとって、家具のレンタルサービは主流になりつつあります。例えば、インド初オンライン上で家具・家電レンタルサービスを実現したFurlencoは、家具・家電はもちろん、車もレンタルできるサービスを展開していて、若者の「理想の住まい・ライフスタイル」をサポートしています。

INSHORTSなら、60語未満で最新ニュースやイベント情報を入手

インドのミレニアル世代は全年齢層の中でも、ニュースに最も関心があり、その80%がスマートフォンにニュースアプリをインストールしています。しかし、長い記事は読みづらいものです。そんな中、Inshortsは60語以内でニュースを届けるという革新的なアイデアで、ミレニアル世代の心を掴みました。また、テクノロジーとAIを用いて、読者一人一人にカスタマイズされたニュースを届けています。このアプリのダウンロードは1000万回を超え、1000万ドル(約10億6000万円)もの利益を生みました。

UBERとOLAで配車予約、BOUNCEとZOOMCARで自転車や車をレンタル

UberとOlaはインド最大の配車予約アプリであり、Bounceは自転車レンタルサービス、Zoomcarは車レンタルサービスを展開しています。それぞれの分野において、最大シェアを持つアプリ(サービス)です。Zoomcarはすべての自動車にAIを搭載しています。AIでドライバーの運転パターンを管理、燃料の残量をチェックなど、危険を警告することで安全なドライブ体験を顧客に提供しています。

Netflix、Disney-Hotstar、Amazon Primeがストリーミングサービスに改革をもたらす

現在、インドの若い世代の60%が従来のテレビチャンネルよりも、OTT(オーバー・ザ・トップ)で映画やドラマを見る傾向があります。そのため、インドのオンライン動画市場は、2025年までに40億ドル(約4240億円)を突破し、Disney傘下のHotstarがインドで一番会員数の多いOTTになると推測されています。現在、ネット配信による動画サービスを利用する人の41%がHotstar会員、26%がAmazon Prime会員、9%がNetflix会員です。2025年末までに、Hotstarだけでも、9300万人もの新規顧客を獲得すると期待されています。

今後のトレンド

インドは地理的・文化的にも多様な国であり、顧客一人一人が「ほしいもの」は様々です。ダイバーシティーあふれるインドにおいて、ご紹介したようなアプリやサービスは、若年層を中心にインド人の生活に欠かせないものになりつつあります。人口の過半を若者が占めるというインドでは、若者をターゲットにしたビジネスモデルが今後、ますます増えていくことでしょう。現在、将来を見据えた大手企業やスタートアップは、若年層を取り込み、彼(女)らに優れた顧客体験を提供する方法を模索・実行しているのです。


参考リンク

https://yourstory.com/2019/10/millennial-apps-social-media-gaming-ott-hotstar-tinder
https://www.financialexpress.com/industry/technology/5-apps-that-are-hot-with-millenials/1776286/
https://economictimes.indiatimes.com/magazines/panache/indian-millennials-addicted-to-smartphones-spend-one-third-of-their-waking-hours-on-whatsapp-fb/articleshow/72902910.cms?from=mdr
https://www.morganstanley.com/ideas/india-millennials-makeover-disruption-growth
https://www.business-standard.com/article/news-ani/5-must-have-on-the-go-apps-for-millennials-118080400363_1.html
https://brandequity.economictimes.indiatimes.com/news/business-of-brands/these-tech-enabled-innovations-influenced-millennials-in-2019/72064294
https://www.pewresearch.org/fact-tank/2019/09/09/us-generations-technology-use/
https://www.businessinsider.in/tech/here-are-the-top-20-apps-millennials-like-way-more-than-other-age-groups-do/slidelist/54334590.cms#slideid=54334591
https://www.livemint.com/companies/news/flipkart-launches-90-minute-delivery-service-11595919001189.html
https://economictimes.indiatimes.com/industry/services/retail/flipkart-to-offer-90-minute-delivery-in-india/articleshow/77216108.cms?from=mdr
https://www.statista.com/statistics/1004623/india-time-spent-online-and-outdoors-by-generation/
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_countries_by_number_of_Internet_users
https://bfsi.economictimes.indiatimes.com/news/fintech/digital-payments-see-106-growth-over-9-months-on-improved-consumer-sentiments-razorpay-report/71689004
https://www.livemint.com/news/india/india-to-contribute-2-2-to-global-digital-payments-market-by-2023-report-11595504933539.html
https://www.arijitbhattacharyya.com/India-witnessing-digital-payments.html
https://thenextweb.com/in/2020/07/29/whatsapp-pay-moves-one-step-closer-to-indian-launch/
https://yourstory.com/2018/02/how-inshorts-makes-money
https://ajuniorvc.com/dunzo-hyperlocal-unicorn-swiggy/
https://www.livemint.com/companies/news/india-s-online-video-market-to-touch-4-billion-by-2025-11589795634495.html
https://www.livemint.com/

リティック シャー  Ritik Shah

プラットフォームコンサルティング部 アシスタントテクニカルアーキテクト

インド工科大学を卒業し、2019年9月に電通アイソバーに参画。大学時代はマーケティング・アナリティクスやマシンラーニングなどの分野でプロジェクトに携わる。現在は、CMS製品の提案やブリッジエンジニア業務に従事し、品質保証 / 制作進行管理を現地メンバーとともに様々なプロジェクトを推進中。

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