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2020.11.18

選ばれるコミュニケーションのエッセンス〜データの使い方で差をつける、顧客アプローチ手法の最新特別講義〜 

近年、デジタルテクノロジーの進化に伴い、消費者へ自社商品やサービスをアピールする方法が増加傾向にあります。されに、新型コロナウイルスの感染拡大によってリアルでの施策が難しくなった今日においては、より多くの企業がデジタル上のコミュニケーションに注力するようになっています。

しかし、その結果として、消費者が受け取る情報量はますます増え、競合他社との「同質化」が進むとの懸念も生じ始めています。

このような競争が激化する状況から抜け出すには、「差」を生み出す施策を展開することこそ重要です。しかし、それが簡単なことではないこともまた周知の通りです。

9月29日に行なわれたウェビナー「選ばれるコミュニケーションのエッセンス〜データの使い方で差をつける、顧客アプローチ手法の最新特別講義〜」では、そんな「差」を生み出すための顧客アプローチのシナリオ設計方法や、顧客体験(CX)の向上に欠かせない「心を動かす」コミュニケーションの実践方法について、具体的な事例を交えてご紹介しました。本稿ではその内容をお伝えします。

優れた顧客体験(CX)とは?

冒頭にも示した通り、今日、消費者が受け取る情報量がますます増え、競合他社との「同質化」が進んでいます。これに対し、テクノロジーの発展により得た「多様なタッチポイント」と「顧客理解を進めるデータ」をうまく効果的に活用し、優れた顧客体験(CX)を消費者にもたらすことは「他社との差別化」に大いに貢献すると言えます。

また、だからこそ「優れたCXとは何か?」をしっかりと把握することが肝心です。

電通アイソバー株式会社 データデザイン部シニアソリューションアーキテクト 坂東沙紀は、「今日、テクノロジーの進展によりプラットフォームもタッチポイントも増えている。また、人々の趣味嗜好も多様化している。そんなデジタル時代において、デジタルマーケの鍵になるのが『CX』だ。特に、コロナ禍ではデジタルマーケは重要になっているが、とりわけ『顧客を中心に捉え優れたCXをもたらすマーケティング』はこれまで以上に重要になる」と切り出しました。

では、実際に顧客を中心に捉えた優れたCXとはどのようなものなのでしょうか?
この問いに対し、まず、坂東はモノを吟味して買うまでのプロセスを示し、タッチポイントごとに適切なコミュニケーションを行なうことで消費者と企業の間に信頼関係(エンゲージメント)が醸成されていく、としました。

また、エンゲージメントを構築し、優れたCXを実現する上で重要なものは「2つの軸」であると述べました。
2つの軸とは、顧客がゴールに向かおうとする「モチベーション(Motivation)」と、その障壁となることをなくすこと「(Frictionless)」を指します。

CXを実践するためには?

前述のMotivationとFrictionlessを実現しながら具体的に良質なCXを計画・実践するためには、着実な準備が欠かせません。電通アイソバーではその一連の流れを4つのステップに分け、取り組みを進めています。

● Discover
ヒアリングや行動分析、リスニング、あらゆるデータ分析のほか、顧客の観察など多角的なアプローチで徹底的にエンドユーザーのインサイトを明らかにしていきます。
同時に、マーケティングや営業、広報や製品企画など、部署の垣根を越えて、クライアント企業の幅広い従業員からヒアリングを行ない、現状を把握します。また、当然、競合企業やブランドの現状について深く調査を行ないます。

● Define
Discoverで得られた情報を受け、目指すべきCXの全体像を定義していきます。例えば、自分たちのエンドユーザーに対してどのタッチポイントでの施策を手厚くしていくか、必要なプラットフォーム何か、新たに加えるべきか、取り組みの優先順位を明確にします。これにより、より早く充実したCXを提供することができます。

● Design
Defineの結果を受けて、あらゆるデザインを行ないます。ここは、電通アイソバーの強みである、クリエイティビティとデータ、プラットフォーム、テクノロジーが持つ力をしなやかに繋げ、一つひとつの体験へと具現化する重要なフェーズでもあります。
タッチポイント別エクスペリエンス設計やクリエィティブ開発、チャネルミックスプランほか、多角的な検討を重ね、プロトタイプ検証やユーザー検証に至るまでを行ない、取り組みの輪郭を明確にして計画をプロジェクトとして前進できるようにします。

● Deliver
Discoverから始まった一連のCX Designを実行に移し、KPIに基づいて「自分たちの顧客にとって最良のCXが提供できているか?」を評価します。結果を検証し、自ら課題を抽出してプロジェクトをさらにブラッシュアップしていきます。

さらに、それぞれの「D」に対して電通アイソバーでは高い専門性と経験・知見に基づいたサポートを行なっています。

例えば、Discoverでは、「CX モデリング」として、「いま自分たちはどのような状況にあるのか?」「自分たちの顧客はどのような人達か?」といったことを整理し、チームの中で心理・行動両面の「顧客のあるべき姿」を描き、共有していきます。

また、「最終的にどのような状態のロイヤル顧客を増やすべきなのか」を、カスタマージャーニーマップやコンセプトダイアグラムで可視化していきます。これによって今後の施策の目的を明確化し、運用している間に目的や目指すべき先を見失って“迷子”にならないようにします。

次に取り組むのが、「CX コミュニケーション/ターゲティング」の検討、つまり具体的な施策を練ってそれをどのチャネルで、どのタイミングで、どんなアプローチで行なうかの検討と決定です。

坂東は、「デジタルマーケで最も重要なことのひとつは、チャネル・コンテンツ・配信タイミングだと言える。それらを適切に考え、施策を実施していくことでより最適なコミュニケーションになっていく」と述べました。

その後、Deliverにおいて、検証と改善を行なう「CX インプルーブメント」の段階に入ります。ここでは、実施した施策のレポーティングとその内容の検証、期待した成果とのギャップを分析し、それを埋めるアクションプランを検討して、施策をブラッシュアップしていく、という流れを続けていきます。

上記のまとめとして坂東は、「最初からうまくいかないが、PDCAを回してブラッシュアップしていくことが大切だ」と、優れたCXを実現するうえでの心構えを強調しました。

実際の事例について

ここまで述べた考え方に対し、坂東は3つの特徴的な事例で経過や成果を紹介しました。

【事例1:大手不動産会社の事例】

▪️施策の内容
本事例ではまず、サービスの利用段階を「登録完了」「初回利用」「継続利用」の3つに分け、「登録完了」ではステップメールで登録のお礼とサービスの案内を。「初回利用」では、サービス内容の再送を。そして、「継続利用」では、初回利用のお礼とサポートをするような内容のコンテンツを用意しました。

次に、上記のように顧客の段階に応じた内容のメールを配信する通常グループと、メールを配信しないコントロールグループを設定。施策によってどのような成果が得られたか検証ができるようにしました。

加えて、KPIとして、それぞれのグループのサービス利用率と平均利用回数、配信からの経過時間で求められる解を設定しました。

▪️施策の結果
「登録完了」の人達に対する施策は「(実施して)ややよかった」という反応になりました。また、配信から少し時間が経ってからの反応が多かったため、開封を促すような件名の工夫等が必要だ、という示唆も得られました。

「初回利用」を対象にした施策では、利用率は好反応だったものの、利用回数は「ややよかった」程度であることが分かりました。そのため、メールクリックを促す施策を追加することで、よりよい結果に繋がる可能性がある、との新たな仮説を立てることができました。

「継続利用」での施策では、あまりいい結果が得られなかったものの、そもそもの配信数が少なかったこともあり、経過観察してくことになりました。

坂東は、この事例のまとめとして、「全部が全部いい結果には至らなかったが、むしろそれぞれの施策とその結果の特性を把握して、観察し続けることで次のアクションの改善が期待できる」としました。

【事例2:大手スポーツメーカーのMA活用支援】

▪️施策の内容
この事例は、「そもそもMAは利用していたが、うまく活用できていなかった。これを利用して売り上げUPを目指したい」というクライアント企業が電通アイソバーをパートナー企業として指名し、実現したものです。また、グローバル展開しているため、様々な場面でグローバルチームとも連携し、施策を進めた案件でもあります。

▪️施策の結果
テンプレートデザインからコンテンツのパーソナライズ、配信の結果分析まで一気通貫で担当した結果、メール施策でのeコマースの売り上げが昨年対比の2倍、CVRも25%UPと、良好な結果が得られました。

坂東はこれについて、「実際の施策は4つで、バースデー、ナーチャリング、ロイヤリティ、カート放棄の際にメールを配信するという『王道の施策』を実践した事例だった。しかし、しっかりと目的を設定して、指標を決めておくことで分析とそのインサイトを次の施策に生かす、ということができた」と、結論付けました。

【事例3:大手通信教育会社のMA導入および活用支援】

▪️施策の内容
本件は、データの一元管理ができるように環境を整え、各タッチポイントで獲得した情報を活用できるようにもしたい、との要望を受けたデータ活用の事例です。具体的には、資料請求に対して返信するメールで、事前に得られたデータを活用する、という内容です。

仮説に基づいた施策を展開するにあたり、コントロールグループと通常のグループに分け、こまめにPDCAを繰り返して徐々に成果を出してきた事例でもあります。

施策の結果
A/Bテスト2パターン、氏名や締め切り日などでパーソナライズ、資料請求に関するメール内のバナー数の調整、サイト来訪日時からメール配信時間を調整するなど、細かい調整を続けた結果、徐々に最適解が見えるようになってきました。以下の表にある通り極めて小さな改善を繰り返すことができたのは、データを一元化したからだ、と言えます。

坂東は、「最初から結果が出たわけではない。なかなか結果が出ず苦しい時期もあったが、長期的に取り組んだことがいい結果につながったと思う」としました。

まとめとして

最後に坂東はまとめとして次の3つを挙げました。

1:顧客のあるべき姿を明確化して、ゴールとなる指標を整理しよう
チームの中で顧客のあるべき姿やゴールを共有しておくことで何か施策で迷った際に「ここがゴールだからこうしていこう」と軌道補正できるようになる。

2:データを活用するには事前準備が必要
施策を実施したあとで「やりたい分析に使うべきデータが取れていない」ということも多々あるもの。事前にどんなデータが取得でき、どんなデータが取得できないのか? また、それにどう対処するのか? といったことを明らかにすることが不可欠。

3:最初から最適な結果には至らない。徐々に最適解に向かっていくことが大事
最初から顧客にとってあるべき姿には至れないので、施策後の効果検証をやって徐々にブラッシュアップしていくことを念頭においてPDCAを回していくという意識が大事。

電通アイソバーでは、ここで挙げた事例に限らず様々な分野のクライアント企業とともにデジタルマーケティングの施策を実践しています。

 

坂東 沙紀 Saki Bando

データデザイン部 シニアソリューションアーキテクト
大手IT企業に新卒入社し、Webディレクターとして大手金融機関のサイト運用やスマートフォンアプリのUI/UX設計に従事。その後、社内向けのSalesforce Marketing Cloudの資格講師を務め、100人以上のメンバーにMAの活用方法をレクチャー。3年ほどMAのレクチャーから提案、案件対応(設計、配信コンテンツ設計、テスト、運用支援 など)に従事したのち、電通アイソバーにてMAの活用支援を行っている。

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