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2020.06.08

自動車・モビリティ業界における、危機の中でのビジネスチャンス

多くの業界と同様に、2020年の春は自動車・モビリティ業界にも売上の減少と、イノベーションの創出機会の双方をもたらしました。近年、日本市場で起きるイノベーションのほとんどが、消費者とビジネス・エコシステムの両方を支援するような新たなサービスの開発です。こういったイノベーションは、日本のモビリティ業界の事業活動の仕組みを変えるのと同時に事業の多様性を広げるのに寄与しました。

事業変革をするにあたり、この業界の企業が知っておくべき重要なポイントはいくつかありますが、まずはいくつかケーススタディを見てみましょう。

新たな市場を見つける

スクーターは1970年代に登場して以来ここ数十年ずっと、日本で欠かせない乗り物となっています。近年、スクーターは一般市民や大手フードデリバリー業者(地元に根差す食堂ではなく)の必需品となっています。他の国と違い、新型コロナウイルスが流行する以前は、日本のレストランのほとんどがテイクアウトというサービス形態を取っておらず、ましてやデリバリーサービスを行う店は、ほとんどありませんでした。ところが、2020年春、日本の外食産業は大きな転換を余儀なくされました。自動車業界においては、レンタル業者がこういった需要の恩恵にあずかり、自社が保有する空きスクーターを地元の小規模事業者に提供し、その結果、通常の3倍もの売り上げが報告された例があります。デリバリーサービスを利用する人が増えれば、小規模飲食店を相手にしたスクーターのような新たな商用車の需要が今後も伸びることが見込まれます。

新たな料金形態やサブスクリプションプランの構築

新型コロナウイルス流行前に、あるレンタカー業者が車を数時間から貸し出すサービスを打ち出しました。顧客行動を徹底的にリサーチした結果、車を借りて仮眠を取ったり、仕事部屋の代わりとして利用するといった需要があることが判明したからです。勤務時間が長い上に、家が狭いので、顧客は、うるさくて窮屈な家を脱出し、静かにのんびり出来る独自の空間をレンタカーに求めたのです。コロナ禍によって会社で働く人々は、在宅勤務を余儀なくされました。コロナ騒動が起きる前には、ほとんど想像もつかなかった勤務形態です。在宅勤務には大きな課題が伴います。一般的に日本の家は狭く、その上、同居する家族の騒音が気になるという人がいるかもしれません。そうなると、家で仕事をするのを諦めて、どこか別の仕事場を確保する必要が出てきます。今後、在宅勤務を取り入れる会社は益々増加していき、自宅を抜け出し、仮眠を取るためのスペースや仮の仕事場としてレンタカーの需要が増えることが見込まれます。このようなマーケット需要に応えるサービスを考案・提供できる企業にとってはビジネスチャンスが広がります。

人の代わりにAIを利用

日本人は対面で商取引をすることで有名ですが、このやり方ではコロナ禍においてさまざまな支障をきたしてしまいます。ソーシャルディスタンスを取って行動しなければならないので、この期間、自動車保険市場の審査業務は特に困難を極めました。ところが、AIを活用した物体認識技術を導入し、デジタル写真を使って仮想審査に乗り出す企業が現れました。このプロセスを経ることで、調査員が早く情報を処理できるようになっただけでなく、初期過程の部分の処理が迅速に行われるようになったことで、顧客への支払いも早く行えるようになりました。迅速なサービスに加え、調査員が現場に立ち入る必要があった時代には、とうてい行けなかった場所でも、この方法なら調査が可能になり、デジタル審査を採用することで中小企業の存在感が高まっています。

AI認証の応用

ウイルスやその他の病原体がこれ以上一般の人々に伝染するのを防ぐための安全手順が順守されているかどうかを保証・監視するため、将来的には何らかの形で監視が行われることになる可能性が高いことが見込まれます。タクシーやハイヤー、バスなどの運転手、レンタカー会社およびカーシェアリング会社、あるいは、もしかしたら航空会社もこれに該当するかもしれませんが、日頃、業務の一環で不特定多数の人と関わりを持つような業種では、安全対策を順守しているかどうかAIを使って検証するシステムを職場で使用するスマートフォンに組み込むという形で監視体制が敷かれるようになるかもしれません。スマートフォンのアプリが運転手の健康状態やマスク着用の有無、車両が清潔であるかどうかといったことを立証するエビデンスを画像やセンサーで認証するというものです。このシステムはすでに日本で行われている自動車配車サービスで導入されていますが、他に多くの組織でも業務の一環として取り入れることは可能です。

御社のビジネスをどのように変えられるか

まずは自社の知識を活かして、それを何か新しいことに応用するために思考、つまり、与えられた条件から、多種多様な発想を生み出す思考をすることから始めてみてはいかがでしょうか。自動車業界に携わる人は、機械やソフト、ロボット工学AIの専門家であり、都市計画にも精通していることが多いですが、こういったことは全て他の産業が必要とする専門分野です。

顧客や既存のインフラではなかなか解決できない問題に商機がないか、また、仕事が重複していて非効率な部分がないかを探ります。上記で述べたように、日本の自動車市場では、事故現場に安全に入ることができないという点と顧客がより迅速な保険料の支払いを求めるという両方の問題を克服するため、保険会社が新しいシステムを導入しました。一方、レンタカー市場では、中小企業が迅速なデリバリーの実現を可能にする方法を構築することが必要になり、これまで使われていなかったレンタルスクーターの需要が生まれました。

顧客データで何か異常がないかを探します。例えば、レンタカー市場で返却済みレンタカーの走行距離が貸し出す前と後で変化していないのは何故か、その理由を突き止めた時のように、まだ手付かずの分野で新たなビジネスチャンスが生まれるのです。

危機に見舞われている最中に、危機をありがたいと思うような人はほとんどいませんが、危機の中にこそ新たなチャンスがあるものと考えてください。ご自身のビジネスや顧客、エコシステムに関する大きな課題について、じっくりと時間をかけて考えることで、どの分野に焦点を合わせたら、ご自身の事業にイノベーションを起こせるのかが、はっきりと見えてくるようになります。電通アイソバーは顧客体験をデザインする会社です。この危機の渦中で御社の専門分野にマッチしたビジネスチャンスを特定するお手伝いを是非、私どもにお任せください。

参照元:
バイク、ミシンが列をなす コロナが変える消費の風景, 日本経済新聞社
People in Japan are renting cars but not driving them, Vox Media,
How Japan’s Tokio Marine uses AI to process insurance claims in ‘minutes’, Tech Wire Asia,

カーダー ジェネッサ Jenessa Carder

CXストラテジー本部付 バイスプレジデント
電通アイソバーにて、消費者体験(CX)戦略担当バイスプレジデント。美容、CPG、ハイテク、ヘルスケア、フィットネスなど様々な業界の世界中のクライアントに対して、キャンペーン、製品発売、デジタルエクスペリエンス、トランスフォーメーションプロジェクトにおいて10年以上のコンサルティング経験を持っています。

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