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2020.03.24

新型コロナウィルスの世界的流行とビジネスの変化

新型コロナウィルスの感染流行が広がり始めて、すでに2ヶ月余りが経ちますが、そのビジネスへの影響について様々なデータや調査が出てきましたので、それらを眺めつつ、この感染流行後へのビジネスの変化について、考えてみたいと思います。

人々の移動が制限される中で、必然的にリアルからデジタルへのシフトが進むわけですが、新型コロナウィルス感染が最初に広がった中国での消費行動の変化を見ると、それは顕著であったことをうかがい知ることができます。

感染拡大期にあった春節の時期で、カルフールが提供する野菜のデリバリーは、対前年600%、JD.comが提供するオンライングローサーは、対前年215%の成長でした。またモバイルインターネットの利用時間も1月初旬は1日6.1時間だったものが、春節後には、7.3時間と大きく伸びています。

また、リモートワークの広がりで、例えば、Microsoft Teamsは、中国国内での利用が、500%成長となっていたり、Alibabaの提供するDingTalkが1000万の企業組織や2万の学校のオンライン授業に使われるなど、働く環境や教育におけるクラウドツールが一気に広がりを見せています。

また医療の現場では、遠隔診療や薬の処方を支援するサービスが試行されたり、新型コロナウィルスに関するフリーのオンラインコンサルティングのサービスが立ち上がったりと、こちらも、一般の消費者に体験してもらう格好の機会とばかりに、様々なサービスが広がり始めています。

こうした環境下で、ecommerceが伸びる、というのは、誰しもが想像するところではありますが、状況はそれほど単純では無いようです。やはり、サプライチェーンや在庫の問題から、需要はあっても、供給ができないという課題に直面したり、あるいは、将来の収入への不安や株式市場の縮小による資産の目減り効果などから消費意欲が減退するといった懸念から、ecommerceに対しての成長期待は、必ずしもポジティブな意見ばかりではありません。

実際、米国の小売業に対する3月1週目の調査では、期待値は半々、といったところ。おそらく、米国での新型コロナウィルスの状況が悪化している現在では、さらに慎重な意見が増えているかもしれません。

(出典:Digital Commerce 360の調査

しかしながら、今回の新型コロナウィルスの影響で、消費者の在宅での消費体験が増加したことにより、eCommerceあるいはOmni Channelへのシフトが進むことは必然的かと思います。

それとともに、ブランド側の情報発信のあり方にも影響を与えそうです。先行き不透明な状況において、ソーシャルメディアで流通する情報に対する見方は厳しくなっており、オーセンティックな情報ソース(公的機関や医療機関など)に信頼を寄せる傾向にあります。

(出典:株式会社QLifeによる新型コロナウイルス感染症に関する緊急アンケート

実際に、Facebookなどの大手SNSプラットフォーマーは、現在のような時期だからこそ、信頼性の確保が重要という認識にあるものの、信頼性確保において、非常に厳しい状況にあるようです。Wiredの記事によれば、Fake News問題以降、コンテンツの信頼性チェックのための大規模な組織を作り、信頼性回復に努めてきたわけですが、今回の新型コロナウィルスで、在宅勤務体制へのシフトせざるを得ず、人的なチェック体制が十分確保できず、AIや機械学習への依存度が上がり、必要以上にコンテンツを削除したりと、混乱をきたしているようです。短期間に解決できる問題でもなく、人との繋がりを求めて、人々がSNSを利用する機会も増えている中、ジレンマに陥っている、という状況もあるようです。
(出典:Wired記事 Coronavirus Disrupts Social Media’s First Line of Defense

こうした中で、SNSを通じて、家族・友人・同僚など、すでに信頼関係のあるつながりの重要性が増しているとも言えるでしょう。Edelmanの調査によれば、信用できる情報源としての評価は、政府やメディアの情報より、勤務先の方が高くなっています。これは、ブランドにとっても、顧客との信頼関係の重要性を示唆しているのではないでしょうか。
(出典:Edelman調査 EDELMAN TRUST BAROMETER SPECIAL REPORT ON COVID-19 DEMONSTRATES ESSENTIAL ROLE OF THE PRIVATE SECTOR

Direct-to-consumerのスタートアップ企業の中には、新型コロナウィルスの広がりとともに、リアル店舗を一時閉店することになり、それに対して、SNSを通じてファンとのダイレクトなコミュニケーションをとっている企業もあります。リアル店舗からオンラインへのスムーズなシフトを図るべく、企業の方針やオンラインでのサポート状況を丁寧に説明し、さらには、企業理念に触れつつ、理解を求めています。人々が信頼できる繋がりを求めている時だからこそ、ブランドとの絆をより確かなものにしよう、そうした企業の姿勢が伺えます。ダイレクトな顧客との繋がりをあまり持たない企業にとっては、一朝一夕に真似のできることではありませんが、こうした企業の非常時のアクションを研究することは、Direct-to-consumerのビジネスを考える上で、参考になる部分が少なくないと思います。

こうした非常時での企業のアクションは、その成果を踏まえ、普段の企業活動にも反映されることになるでしょう。消費行動の変化とともに、こうした非常時において、顧客や一般の消費者に対して、何ができるのか、各ブランド企業の姿勢が問われている時でもあるかと思います。短期的な視点ではなく、中長期的な顧客との関係づくりに優先順位をおき、コミュニケーションを考えるべきかと思います。

Direct-to-consumerの代表格、Allbirdsのソーシャル上でのコミュニケーション

得丸英俊 Hidetoshi Tokumaru

電通アイソバー株式会社 代表取締役社長(CEO)
電通入社後、営業局勤務を経て、1990年代後半より、デジタル領域にフォーカスしたマーケティングプランナーに。その後、電通グループのベンチャーキャピタルや外資インタラクティブエージェンシーとのJVなどの役員等を歴任し、2009年11月より、当時の電通レイザーフィッシュ(現・電通アイソバー)代表取締役社長に就任、現在に至る。ボーダレスに広がるデジタルマーケティング領域におけるエージェンシーのあり方を探求、グローバルデジタルエージェンシーIsobarの日本法人をリードする。

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